空手に限らず人の基本の動きは一つではない | 空手 千葉

― 4スタンス理論という新たな視点 ―

目次案: 「人の基本の動きは一つでは無い。大きく分けると4つある。当道場では4スタンス理論を根底に置いて指導しています。」


  1. はじめに「人間の身体の動かし方は一つではない」――これは当道場が指導の根底に据えている考え方です。昔ながらのスポーツ教育や武道の世界では、「基本の型」や「理想のフォーム」が唯一無二の正解として語られがちですが、実はそれが全ての人に当てはまるわけではありません。
    身体のつくりや重心の位置、可動域の特性などにより、人それぞれ「正しい動き方」は違うのです。当道場では、個人差に応じた運動指導を目指し、「4スタンス理論」を導入しています。この理論を知ることで、自分自身の身体の特徴に気づき、効率的に動けるようになります。空手に限らず、すべての運動に応用できるこの視点を、ぜひ知っていただきたいと思います。

1. 運動指導の新たな視点「4スタンス理論」とは?
4スタンス理論は、廣戸聡一氏によって提唱された、身体操作の特性に基づいた分類理論です。人の身体の動かし方には個人差があり、その違いを4つの基本タイプに分類して説明するものです。野球、サッカー、陸上、ゴルフなど、さまざまなプロスポーツ界で注目されており、パフォーマンスの向上やケガの防止、日常動作の改善など、多くの効果が認められています。
この理論の特長は、「正しい動き方」を画一的に教えるのではなく、「その人にとって自然な動き方とは何か?」を明らかにし、それに合った指導を行う点にあります。

2. なぜ道場でこの理論を導入したのか?
私たちの道場では、大人を中心にこの理論を取り入れています。というのも、4スタンス理論はある程度の理解力や身体への意識が求められるため、小さな子供には少し難しい部分があるからです。もちろん、子供たちにも「自分に合った動き方がある」という考え方は伝えていますが、説明は簡単なものに留め、実践の中で少しずつ気づかせていくようにしています。
大人に対しては、理論的な説明を交えながら「自分に合った型の練習」や「動作のクセの修正」などを行うことで、より早い上達やケガの予防に繋がっています。

3.  4スタンス理論の基本解説

4スタンス理論では、身体の「軸」や「重心の位置」によって人の動き方を以下の4タイプに分類します。

  • A1タイプ:土踏まずの中の内側前方(親指寄り)に重心がある
  • A2タイプ:土踏まずの中の外側前方(小指寄り)に重心がある
  • B1タイプ:土踏まずの中の内側後方(かかと寄り)に重心がある
  • B2タイプ:土踏まずの中の外側後方(かかと寄り)に重心がある

重心位置というと、よく「私は靴のかかとの外側がすり減ります。だから重心はそこですか?」という質問をいただきます。しかし、重心というのは体重のかかっている場所ではなく、「身体操作の軸がどこを基点に動いているか」を指します。カメラの三脚の例がわかりやすいでしょう。3本の脚で均等に支えていても、重心は中央にあります。それと同じように、身体の支点は一見外に見えても、軸は別のところにある場合が多いのです。

また、4タイプそれぞれで関節の使い方や動かす順番が異なるため、全く同じトレーニングをしても、成果が出る人と出にくい人が出てきます。「自分には向いていない」と思うのは早計で、タイプに合った指導に切り替えることで、大きく伸びる可能性があります。


4. 4スタンス理論で動きを知るメリット

● パフォーマンスの向上

自分の身体の特性に合った動き方をすることで、無駄な力みが減り、より効率的に技を出すことができます。特に空手では、突きや蹴りの威力とスピードに違いが出てきます。

● ケガの予防

タイプに合わない動きを無理に繰り返すと、関節や筋肉に過剰な負担がかかり、故障のリスクが高まります。4スタンス理論を取り入れることで、そうしたトラブルを未然に防ぐことが可能になります。

● 日常生活への応用

姿勢の改善や歩行の安定、椅子に座るときの疲労感の軽減など、日常の所作にも応用できるのがこの理論の良さです。


5. 指導に活かす4スタンス別アプローチ

● タイプ別ウォーミングアップ

準備体操などは全員一緒に行いますが、少しだけ違いが出てきます。例えば、前屈など手を下ろして行く時に大腿部の前を触って下げるAタイプ。一方、Bタイプはモモの裏を触りながら手を下げて行くようにします。また、準備体操その中にも意識の違いも出てきます。ジャンプする時、Aタイプは膝に体重を乗せる、Bタイプは腰に体重を乗せる、などです。

● 型の練習法の違い

同じ型でも、動きの強調すべきポイントがタイプによって違います。突きの時の体重移動の感覚、回転軸の位置、タイミングなどをタイプ別に工夫して指導しています。

● 実戦での動き方アドバイス

相手との距離感の取り方、攻防のリズム、力の抜き方と入れ方――すべてにおいて、タイプに応じた戦い方があります。それに気づくと、試合の結果にも大きく影響が出てきます。


6. 指導の現場から:成功事例

あるB2タイプの生徒は、基本動作の型でなかなかバランスが取れずに悩んでいましたが、重心を意識させるだけで安定感がぐっと増し、わずか数週間で見違えるほどの進歩を遂げました。

別のB1タイプの女性は、もともと体が硬く、柔軟性に悩んでいましたが、タイプに合った柔軟体操を実践することで、無理なく可動域が広がり、自然な動きが身につきました。

また、自分のタイプに気づいた中学生の生徒が、「ああ、だからあの動きが苦手だったのか!」と納得し、自信を持って練習に取り組むようになった例もあります。


7. スポーツ以外での活用法

4スタンス理論はスポーツ以外にも活かせます。日常生活での姿勢の改善、デスクワーク時の疲労軽減、さらには舞踊や演劇など、身体表現を伴う芸術分野でも注目されています。自分の身体を深く理解することは、あらゆる動きの質を高める第一歩なのです。


8. 課題と今後の可能性

もちろん、4スタンス理論にも課題はあります。誤診断のリスクもあります。自己診断も可能ですが、正確な判断には資格を持ったレッシュ・トレーナーの診断が最も信頼できます。今後さらに研究が進めば、より多様な指導法や応用の幅が広がることが期待されます。


まとめ:動きを知ることは、自分を知ること

自分の動きの特性を知ることは、自分自身を深く理解することにも繋がります。型にはめる指導ではなく、個々に合った成長の道を見つけること――それが当道場の指導方針です。

まずは一度、自分の「動きのクセ」と向き合ってみませんか?4スタンス理論を取り入れた空手で、あなたの可能性を広げましょう。


よくある質問(Q&A)

Q:自分のタイプはどうやって分かりますか?
A:最も正確なのは、資格を持ったレッシュ・トレーナーの診断です。簡単なセルフチェックもありますが、判断が難しいため、専門家の指導をおすすめします。

Q:道場以外でも活かせますか?
A:はい、もちろんです。日常生活や他のスポーツでも活用できます。

Q:すぐに使えるようになりますか?
A:人によって習得のスピードは異なりますが、基本を理解すれば徐々に身体に馴染んできます。継続が鍵です。